「ねぇ、マコちゃん」

名前を呼ぶと返事だけではなく、振り返ってくれるその動作が愛しくて、思わず口付けをした。

「…っ、」

言葉をなくし、頬を赤らめるその仕種にどうしてこの欲が抗えようか。




  マコちゃんは知らない。

  オレっちが、いつでもどんな時でもマコちゃんを見ていることを。




おれっちが抗えないんだから、マコちゃんにも抵抗は許さない。
耳元でそっと囁くと諦めたように目を伏せる。




  マコちゃんは知らない。

  その表情が、「仕方ないな」と許してくれているようで、オレっちがとても安堵できるということを。




「何かあったんですか」と聞かれても、「何も?」としか答えることができない。
マコちゃんが、優しすぎるからだよ。などとは口が裂けてもいえない。




  マコちゃんは知らない。

  その優しさがいつ遠ざかってしまうのかと、オレっちが怯えてることを。




「可愛いね」「大好きだよ」。そんな言葉を囁きながら、彼を側におこうとする。
わざと軽い口調で言うのは、自分自身がこれ以上彼を好きにならないようにするため。




  マコちゃんは知らない。

  あれが本心だということを。


  「これは嘘だ」という嘘をついていることを。




彼はきっと、オレっちに同情しているだけで、オレっちだけが本気。
きっと彼は、オレっちに本気になることはない。


だから、


自分自身に嘘をついて、彼が抗えないようにずるい言葉を囁く。






  マコちゃんは、知らない。






  キミは、とても愛しい人。

 

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