「ねぇ、マコちゃん」
呼ばれて振り向くと、すぐ目の前に彼の顔があった。
「…っ、」
口付けをされた、と頭が理解をする前に更に思考を奪われる。
京羅樹さんはずるい。
いつも突然やってきて、僕の中を荒らしてまわる。
離された後に何か言おうと口を開くと、今度は僕の耳元にそっと口を寄せる。
囁かれた言葉に、僕はどうしようもなくて、彼を受け入れてしまう。
京羅樹さんはずるい。
どう言えば僕が断れなくなるかを知っている。
僕が「何かあったんですか」、と聞くと「何も?」、と笑顔で言う。
だけど僕が目を瞑った後に、一瞬、彼が表情を変えるのを知っている。
京羅樹さんはずるい。
いつも強気なくせに、急に寂しそうな顔をする。
「赤くなった顔、可愛いね」と彼は言う。
「そんなマコちゃんが大好きだよ」と彼は言う。
京羅樹さんはずるい。
いつも平気で、
嘘をつく。
彼にとっては、きっと僕は都合のいい人物なんだろう。
きっと「大好き」は嘘だって解っている。
だけど、
その言葉を聞くと身体中が熱くなってしまう自分がいて。
京羅樹さんは、ずるい。
そして、とても可哀想な人。
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